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2019年11月17日、東京ほんま会の「初級AutoHotkey(AHK)講座」に参加しました(初級AHK講座についての体験談はこちら)。
本日は、この講座で学んだAHKの導入方法と翻訳作業への活かし方についてまとめておきます。
AHKを翻訳業務で利用するためのはじめの一歩
(インストールと簡単なスクリプトの書き方)
注:講師のテリー斎藤さんに、初級AHK講座に関する記事を書くことについて了承を得ています。どうもありがとうございます。
本記事の内容は「ツールを使う力(翻訳に必要な7つのカード参照)」に該当します。
AHKとは
AutoHotkeyとは、 以下のような「キーを置き換えたり」、「キーにまつわる作業を自動化する」ためのアプリです。翻訳作業の効率化には欠かせません。
- キーの置き換え(例:半角/全角キーを手元に持ってくる)
- 入力変換(例:「asap」と打って「as soon as possible」と入力させる)
- 特定の機能を自動で実行させるキーの作成(例:検索したい文字をワンボタンでグーグル検索させる)
AHKをインストールした後で、ユーザーは特定の動作命令を行う「スクリプト」を作成する必要があります。作成したAHKは、基本的にはプラットフォームに関係なく(CATツール上でも、ブラウザ上でも、デスクトップ上でも、ワード上でも)動作します。
このAHKスクリプトの作成には、一種のプログラミングスキルを求められますが、自分の力である程度のことはできるようになります。
また、オンライン上に無料でスクリプトが公開されていたりするので、プログラミングが苦手な方も諦めることはないです。ただし複雑な動作命令を作成したいとなると、さすがに時間をかけて勉強する必要がでてきそうです。
AHKを利用する際の基本的な流れは以下のようになります。
- AHKをインストールする
- AHKファイル内にスクリプトを書く
- AHKファイルを上書き保存する
- AHKファイルをリロードする
- あとは2~4の繰り返し。
では、早速インストールから説明していきます。
➀インストールする
まず、以下のサイトからAHKを自分のPCにインストールします。
ダウンロード&インストールの簡単な手引き
- AHK公式サイトページの「Download Current Version」をクリック
- インストーラーの手順に従いすすむ
- AutoHotkey Set upという画面が表示されるので、「Express Installation」をクリック
- インストール完了です
注意:上記は最も簡単なインストール方法です。お持ちのPCの仕様等の理由で、上手くインストールできない方は公式サイト等でお調べください。
②スクリプトを書く
インストールを終えると、デスクトップ上で右クリック>「新規作成」>「AutoHotkey Script」が表示されます。「H」のロゴです。

こちらをクリックすると、新しいAHKファイル(拡張子名は、「.ahk」)を作成できます。このAHKファイルを右クリック>「Edit Script」を押すと次のようなエディターが表示されます。

初めからずらずらと文字(#NoEnv~)が並んでいます。こちらは無視して、この下にスクリプトを記述していきます。
スクリプトを書く際のキー
AHKにスクリプトを記述していく際に、キーボードのキーを記述することになりますが、便宜上それぞれAHK上のコードが割り振られています (例:「無変換キー」はAHKスクリプト上では「vk1D」と記述する) 。
よって、以下のキーリストに従って記述する必要があります。
(1)キーを置き換える
最初は、「キーを置き換えるスクリプト」についてご説明します。
内容と目的
キーボード上で、自分の好きなようにキーを置き換えるができます。例えば、「無変換キー」を「半角/全角キー」に変更することができます。
使用頻度が多くかつ遠くにあるキーを、使用頻度の低くかつ近くにあるキーに変更し、腱鞘炎の予防や作業効率の向上を狙います。
スクリプトの公式
以下の公式に当てはめてAHKファイルに記述すれば、 キーの割り振りを変更することができます。
任意のキー1::任意のキー2
機能:任意のキー1を他の任意のキー2に置き換える
注意:この際、任意のキー1は引き続きこれまでと同様の機能を有します。任意のキー2は任意のキー1に取って代わり元の機能を失います。ちなみに「::」は半角コロンです。
すぐに使えるスクリプト
下記のスクリプトは、キーボード上で左上の遠くにあるくせに頻繁に使う「半角/全角キー」を近くにあるのにほとんど使わないかつ自分に近い「無変換キー」に置き換えるものです。
方法としては、下記の青色背景のスクリプトをAHKファイル内に入力して、「上書き保存」>該当するAHKアイコンを右クリックして「Reload This Script」を押してください。
vk1D::!vk19
無変換キーを押すだけで、日本語入力と英語入力をさくさくと変更できるようになりました。かよわき小指を守ろう。
(2)入力変換を設定する
次は、「入力変換を設定するスクリプト」について説明します。
内容と目的
特定の入力を別の入力に変換することができます。例えば、「asap」と打って「as soon as possible」と入力させることができます。
略語をスペルアウトさせたり、誤入力を修正して表示させることができます。 キー入力の迅速化とタイプミスの防止に役立ちます。
スクリプトの公式
以下の公式に当てはめてAHKファイルに記述すれば、 キー入力を変換することができます。
::任意の文字1(半角のみ)::任意の文字2
機能:任意の文字1を任意の文字2と入力させます。
注意:任意の文字1は半角しか登録できません。ちなみに「::」は半角コロンです。
すぐに使えるスクリプト
下記のスクリプトは、 あまりいい例ではないのですが、「douzo」と打ってEnterキーを押すと「どうぞよろしくお願いいたします」2行空けて「名前」を表示させるものです。
::douzo::どうぞよろしくお願いいたします。`r`r名前
「どうぞよろしくお願いいたします」を自分の普段使っている締めの言葉に変更して、「名前」の部分をご自身の氏名に変更すれば、締めの言葉を高速に入力するスクリプトが完成します。
ちなみに、上記スクリプト内の「`r」には改行の機能があります。
(3)Google検索を迅速化する
最後に、「Google検索を迅速化するスクリプト」について説明します。
内容と目的
検索したい文字をワンタッチでGoogle検索できるようになります。翻訳において欠かすことのできないオンラインリサーチの効率をあげることができます。
スクリプトの公式
以下の公式に当てはめてAHKファイルに記述すれば、 Google上で文字列を検索することができます。
検索機能を呼び起こすキー::
Clipboard =
Send ^c
ClipWait, 1
Run https://www.google.com/search?q=\”%Clipboard%\”
Return
注意:こちらは絞り込み検索用のスクリプトになっております。Run横の、\”と\”を外せば絞り込み検索を解除できます。
上記の「検索機能を呼び起こすキー」を設定するだけでこのスクリプトは完成します。検索したい文字列を選択して、設定した検索機能を呼び起こすキーを押してください。Google検索の窓に選択した文字列が入り、自動で検索できます。
③その他役立つ情報
ここでは、AHKを利用するにあたり役立つことをご紹介します。
AHKファイルをスタートアップフォルダーに入れて自動実行
作成したAHKファイルを実行するには、AHKファイルをダブルクリックまたは「Run Script」を押す必要があります。パソコンを起動するたびに毎回実行させるのは手間がかかるので、AHKファイルをスタートアップフォルダーに入れておくと便利です。これにより、パソコンを起動する際に自動的に当該AHKファイルを実行させることができます。
1.WindowsキーとRキーを同時に押します。
2.「ファイル名を指定して実行」という画面が出てくるので、「shell:startup」を入力してOKを押します。
3.スタートアップフォルダーが開かれるので、ここに作成したAHKファイルのショートカットファイルを入れて完了です。次回からパソコンを起動するたびにAHKが起動します。
検索用:左クリック2回で単語コピー
本記事をTwitterで紹介したところ、詳しい方にAHKのすばらしい技を教えていただきました。
上記の「Google検索を迅速化するスクリプトの公式」を試してみた方は、下記ツイート内のスクリプトも実装してみてください。ダブルクリックするだけで単語を選択コピーしてくれるので、検索の迅速化が進みます。
「Send ^c」と「ClipWait, 1」の間に下記を挿入。
;文字列が選択されているかどうかを判断し、選択されていない場合、マウスを左クリック2回で単語選択してコピー
If StrLen(clipboard)<=1
{
Mouseclick,Left,,,2
Send,^c
}英単語検索をさらに迅速化できます。 https://t.co/6ZjfgBEGun
— 齊藤完治@行きたいところがたくさん出てきて、いやぁ、もう大変。 (@kanji_saito) November 26, 2019
まとめ
本日はAHKの導入方法と簡単なスクリプトの書き方をまとめました。
この記事では、AHKの持つ可能性のほんの一部分を紹介しているに過ぎません。
AHKを最大限に活かすには、つまり自分の翻訳作業を最大限に効率化するためには、どのようにして「自分に合ったオリジナルのスクリプトを作成するか」が重要になってきます。自分の頭を使ってスクリプト構築していかなければなりません。
本日もお読みいただきどうもありがとうございました。
この記事がどこかのどなたかのためになれば嬉しいです。
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