本記事では保守の思想について説明していきます。
私は少し前まで「保守」・「保守主義」・「保守思想」といった言葉の意味をしっかりと理解できていませんでした。政治にもあまり関心がなく(最低限の政治参加として投票には行く)、政治に関わる議論に口をはさんだことは一度もありません。
しかし、調べてみるとなかなか面白いのです。政治にも以前よりは興味が持てました。面白くてためになったので、本記事では右派・左派、そして保守思想の本質的な意味を共有します。
まっとうな保守の視点があれば、冷静に日本の政治を考えることができるようになるかと思います。ゆるぎない自分の軸をもって、次の選挙に臨もうではありませんか。
結論から申し上げますと、保守思想は以下の図のような位置関係にあります(スマホの方は見にくいでしょ。ごめんよー)。これからこの関係性を説明していきます。実際のところは保守=右派というわけではないという話です。

内容に入る前に指摘しておかなければならないのは、 本記事は私が物心ついた頃からこれまで見聞きしてきた政治報道・ニュース等と本記事下部の参考書籍に基づいているということです。私は政治の専門家ではなく、どこかに不備がある可能性がありますので疑って読んでいただきたく思います。間違っていると思ったらコメントください。
左派と右派について
保守思想の本質を理解するためには、左派と右派について知る必要があります。
昔は明確な意味を持っていた
かつては右派と左派の概念は明確でした。たとえば、自民党は「右」、社会党や共産党は「左」という構図があり共通理解のもと使われていました。
しかし、世界情勢の変化とともに20世紀後半からその意味が失われていきました。
1989年には東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊し、「米ソ冷戦」が終焉を迎えます。いわゆる社会主義、共産主義といった思想がそれまでの力をなくし、日本社会において、「保守」と「革新」という二項対立は徐々に意味を失っていきました。
原田 曜平 (2015)、 『日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書―「団塊世代」から「さとり世代」まで一気にわかる』阪本 節郎、 p. 106.
新人類世代(1961~1965年生まれ)の方々より前に生まれた団塊世代やポパイ・JJ世代の方々は、政治を通して自分が右派なのか左派なのか明確に選択を迫られていたようです。今では考えられませんよね。
現在でも、あの政党は右寄り、あの新聞は左寄りといったように使われてはいますが、その意味が多義性を帯びて曖昧になっているように感じます(ただのレッテル貼りで使われることも)。
それでも右と左の本質は知っておきたい
右と左の定義は曖昧になってきていますが、右と左の本質とその尺度を知っておくと政治にうまく参加できるようになります。
状況に合わせて、ある政治家の思想や行動が右寄りか左寄りなのかがわかると、選挙の際により適切な、自分の思想に合った判断を下すことができるからです。
右と左の本質的な意味は以下の引用のとおりです。
(前略)「自由」「平等」といった価値をより実現しようとする思想、政治的立場ほど、「左寄り」なのです。それらがよからぬものとして否定し覆そうとする「伝統的秩序」を、より尊重し守ろうとするほど、「右寄り」なのです。
浅羽通明(2006)、『右翼と左翼』、幻冬舎(第一刷)p 46.
ふむ、どういうことでしょうか。
左派も右派も理想社会を目指しているが、その手段が違うだけ
左派は人間の理性を信じています。合理的な改革によって進歩し、自由と平等のある理想社会を追い求めます。
一方、右派は人間の理性は不完全だと反論します。そして、過去の中の叡智や伝統が大事と考え、これを守ろうとします。過去に回帰することで理想社会を求めるわけです。
ですから、左派も右派も「理想の社会を目指す」という点でその目的は変わらないのです。この点は少し心に響きます。黒い街宣車などを見ることもあるかもしれませんが、あれは理想社会を目指しての行動だと理解しました。
ちなみに、右翼と左翼の原義は、フランス革命後の国民会議までにさかのぼります。議長からみて右側にいたのが守旧派であり、左側にいたのが革新派であり、それらがまるで翼のように見えたから右翼(right-wing)、左翼(left-wing)という名が付けられたようです。面白いです。
上記の説明をまとめて図にすると以下のようになります。

左でも右でもない「保守の思想」
上記の図でお気づきになったかもしれませんが、真ん中より少し左側に「保守」の文字が見えます。
私は、少し右派寄りにあたるのがエドマンド・バークの提唱した「保守」の思想だと現時点では考えます。一般的には右派=保守という共通の理解がありますよね。しかし、「保守」という言葉の意味はもう少し射程が広いということをお伝えしています。
保守の思想を持つものは、「いわば常識人」と作家の適菜収さんは著書『安倍でもわかる保守思想入門 』内(うん、タイトルのインパクトよ)でおっしゃっています。
上記の図のとおり、左派に対しては、理性は完璧じゃないので抜本的な改革は危険だと批判します。右派に対しては、過去の叡智や伝統は大事だが、世の中の仕組みは変わっているから前に進むことも大切だと批判します。
つまり、時代の変化に合わせて徐々に改革を行って、これまで先祖が築いてきた世界・伝統を保守していこうという、あたりまえの考え方を持つ人々なのです。
また、保守の思想の根底にあるのは「懐疑主義」であり、他者だけでなく自分の考えも疑います。そして政治に完璧はないので「永遠の微調整」を続けていくしかないと半ば悟っている感じもします。
バークの保守の思想を要約すると、政治には必ずしも正解はないが、目の前の問題をしっかりと考えて、自分と他人の理性を疑い、適切な判断と調整を行い続け、よりよい社会を作ろうとするものと言えるかと思います。
日本の政治にまっとうな保守の思想を
これで保守思想の本質に関する説明は終わりです。
保守の思想は左や右に偏らず、バランスの取れた考え方に思えませんか。日本の政治家のみなさんには、 このバランス感覚を持ってしてまっとうな政治活動を行っていただきたいと切に願います(抜本的な改革とか急成長は望まない)。
最後までお読みいただきどうもありがとうございました。
参考文献
『右翼と左翼』浅羽通明(著)
右翼と左翼の意味について知りたい方は、まずはこちらの本から読むことをおすすめします。
『フランス革命についての省察』エドマント・バーク(著)
『安倍でもわかる保守思想入門』適菜収(著)
『右翼と左翼はどうちがう?』 雨宮処凛(著)
『「右翼」と「左翼」の謎がよくわかる本』鈴木邦男(著)
『日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書―「団塊世代」から「さとり世代」まで一気にわかる』阪本 節郎、原田 曜平(著)
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