2020年7月26日、翻訳フォーラムのオンラインセミナー「おうちでレッスンシリーズ#1最初に買う辞書・使う辞書」に参加させていただきました。
産業翻訳者に必要な辞書環境の全体像がつかめたので私にとっては大きな収穫となりました。
翻訳のための辞書環境は、信頼できる良い辞書を自分の作業スタイル・予算・目的に合わせてさまざまな形態でそろえることを知りました。
本日は、このセミナーで学んだことを活かして私の辞書環境の構築例を示します。
いかんせん私の例を使ったばかりに、PASORAMAユーザー向けの記事になってしまいましたが参考になれば嬉しいです。
本記事の内容は「翻訳に必要な7つのカード」で説明する「調査する力」にあたります。あわせてお読みください。
辞書環境の構築手順
さっそくですが、辞書環境は以下の手順で構築していきます。
①現在の辞書環境を点検して弱いところを知る
②改善方法(足りない辞書やツールの導入)を調べる
③予算に合わせて落としどころ(辞書の質・数・形態)を見つける
①現在の辞書環境を点検して弱いところを知る
まずは手持ちの辞書を確認して弱いところを見つけます。
「弱いところ」というのは以下に記載するようなことです。
- 翻訳に必要な辞書が十分でない
- 辞書の版が古い
- 作業効率のわるい環境になっている(理由もなく紙ベースの辞書を使っているなど)
- その辞書環境に持続性がない
では、揃えるべき翻訳に必要な辞書とはなんでしょうか。
翻訳に必要な辞書
翻訳に必要な辞書は大きく分けると以下のようになります。
- 英英辞典 – 学習者向け英英辞典
- 英和辞典 – 大辞典・中辞典
- 国語辞典 – 大型辞典・中型事典・小型事典
- その他(用字用語集、コロケーション辞典、専門辞書、類語辞典
このなかでも信頼のできる辞書を自分の作業スタイルや予算に合わせて揃えていく必要があります。
現在の辞書環境の点検
たとえば、2020年8月1日現在の私の辞書環境は、上記の必要な辞書に照らし合わせると以下のようになります。
- 英英辞典 – 学習者向け英英辞典:PASORAMA SR-9003(6つ)
- 英和辞典 – 大辞典・中辞典:PASORAMA SR-9003(6つ)
- 国語辞典 – 大型辞典・中型事典・小型事典: PASORAMA SR-9003(3つ) 、無料オンライン辞書
- その他
・スタイルガイド(用字用語集):記者ハンドブック(紙ベース)
・コロケーション辞典:てにをは辞典・無料オンライン辞書や無料コーパス(少納言など)
・専門辞書:PASORAMA SR-9003(理系とビジネスのみ)と無料オンライン辞書
・類語辞典:PASORAMA SR-9003 (1つ)と無料オンライン辞書
表面上ではすべての辞書を網羅できていますが、辞書に不足があります。
あと、そもそもPASORAMAには将来使えなくなるという未来が待っています。
弱いところを特定する
ここから辞書環境として弱いところは次のようなものが考えられます。
- PASORAMAでおおむねの辞書はカバーできているが版が古くなってしまっている辞書もある
- そもそもPASORAMAは今後使えなくなる可能性が高い
- 信頼できる国語辞典と類語辞典が少ない
- 記者ハンドブックについては紙の辞書を使っていて時間がかかっている。(てにをは辞典は紙版しかないのでしょうがない)
私の場合はPASORAMAに頼りすぎているので、抜本的に別の辞書環境への移行が必要になります。そのほかは微調整でどうにかなりそうです。
では弱みがわかったので改善方法を探していきます。
②改善方法を調べる
セミナーの内容に加えてインターネットでいろいろ調べてみたところ、以下の方法により上記4つの問題を改善できそうです。
1.EPWINGやLogovistaによるパソコン上での辞書環境の構築
2.有料オンライン辞書(ジャパンナレッジ・KOD)またはアプリの辞書の利用
3.記者ハンドブックについてはATOK辞書の利用
実際は予算などを考えて落としどころを見つけていく必要があります。
③予算に合わせて落としどころを見つける
予算のことを考えると以下の方向性が見えます。
予算に余裕があるなら……
・LogoVistaでメインをそろえ、英英はオンラインでまかなう
・アプリでメインをそろえ、英英もそろえる予算に余裕がなければ……
禿頭帽子屋の独語妄言 side A # SII DAYFILERからの移行を考える、2019年7月版、参考価格付き http://baldhatter.txt-nifty.com/misc/2019/07/post-f94052.html?fbclid=IwAR3r5sEecaV77Jk6tGbpIX7ff2WEe9CBwMyw_yO4qlZJyX1biPFd0xmwJdE
・有料オンラインでメインをそろえ、英英はオンラインでまかなう
・PC上には、少しずつ予算をかけて増やしていく
私の場合は、具体的には「Logovista」でメインをそろえて(EPWINGで補強しつつ)、ジャパンナレッジ(JK)を年間契約することになりそうです。
予算にまったく余裕はないので少しずつ辞書を購入していき、PASORAMAが使えなくなるまでにある程度そろっていればいいです。
また、どうやらEPWING辞書は入手困難なものが多いようですのでLogovistaになりそうです。使いずらいという意見もありますが今後調べてみたいと思います。
オンライン辞書としてはJKを使用します。KODよりJKのほうが、Logovistaに入れられない辞書(うんのさんの辞書など)をうまくカバーできそうだからです。
記者ハンドブックの紙ベース問題については、次のボーナスにでも「共同通信社 記者ハンドブック辞書 第13版 for ATOK 通常版」を購入すれば解決できます。
こういった微調整も今後いろいろしないといけないのだなと思っています。
おわりに
以上です。
冒頭でも言いましたが、産業翻訳の辞書環境については、信頼できる良い辞書を、自分の作業スタイル・予算・目的に合わせてさまざまな形態でそろえることが大事です。
辞書環境に唯一の正解はないので、自分に合った方法を探してみてください。
この自分にあった辞書環境を調査して構築する時間はとても有意義で楽しいものだと思います。
本日も最後までお読みいただきどうもありがとうございました。
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