英日翻訳の校閲をしていると、「>10mg」や「≦ 5 days」といった片側(左側)のいない不等号を見かけることがあります。これ、どうやって訳しますか?
左側なし不等号の早見表
まずは、英語の左側なしの不等号における翻訳の例をまとめておきます。この訳例は正しいのですが、私は頭がカタいので最初は混乱しました。「見方によっては、訳し方が変わらないかな?」と思ったのです。頭のやわらかい人はこの先は読まなくても大丈夫です。
英語 | 日本語 |
≧ X | X以上 |
> X | X超 |
≦ X | X以下 |
< X | X未満 |
混乱をまねく左側なし不等号
日本人としてこれまで左側のいない不等号を見かけた記憶がありません。
数学の授業では「A ≦ B」などと、不等号を二つの数値がはさむような形で教わったことはありますが、「≦ B」の存在に覚えがないのです(どなたか知っていれば教えてください)。
それで、とにかく私は「≦ B」は「B以下」とも「Bは~以上」とも取れるよねと混乱しました。あげくの果てに「じゃあB以上」でもいいのかなと誤った考えに至るのでした。
実は片側(左側)はいて、左側のヤツ中心に考える
少し考えてみれば、 「≦ B」 の左側には何らかの主体がいることに気づきます。
文の記号として表れていないだけで、文中の意味としてはもう一方の比較対象が絶対にいるのです。
そしてその比較対象中心で考えているのです。つまり以下の表のようになります。
英語 | 日本語 |
(Aは)≧ X | (Aは)X以上 |
(Aは)> X | (Aは) X超 |
(Aは)≦ X | (Aは)X以下 |
(Aは)< X | (Aは)X未満 |
例えば、「A ≧ B」という英文があるとします。
そして、これを訳すにはAから見るか、Bから見るかの二通りあります。
(1)Aから見る・・・AはB以上 〇
(2)Bから見る・・・BはA以下 ✕
(1)が正解です。答えは簡単で、ほとんどの場合で左側(左辺)は比較対象で、右側(右辺)は数値だからです。数値中心に考えるのはおかしいのです。
例えば、「Water > 10L」と見たとき、比較対象である水を中心に、「水は10L超」と訳します。「10Lは水より~」など数値中心には考えません。そして「10L < Water」なんて表現はしないのです。
よって、 「≧ B」 は常に「B以上」の訳となるのです。
まとめ:右側の数値からではなく、左側の対象からみて訳す
冒頭の問いに対する答えですが、
「>10mg」は、なんらかの具体的な対象があって「対象 >10mg」なので、(対象は)10mg超と訳します。
「≦ 5 days」は、なんらかの具体的な対象があって「対象 ≦ 5 days」なので、(対象は) 5日以下と訳します。
これを 「>10mg」 は「数値10mgは何か未満だから~」、10mg未満(間違い)としちゃだめなのです。
これで私の心のモヤモヤは晴れました。
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