翻訳で生計を立てていくにあたり、はじめの第一歩として「翻訳の専門分野」を定めたほうが良いとされています。
なんとなく翻訳の勉強を開始するのではなく、「この分野で生きていく」という意志を持って翻訳者を志したほうが良いというわけです。
では、翻訳の専門分野とは何でしょうか。
本日は、以下のような疑問にお答えしたいと思います。
翻訳の専門分野を決める利点や自分にあった専門分野の見つけ方について説明する。
翻訳の専門分野を決める利点
専門分野を決めることには、以下のような利点があります。
専門分野を決める利点
- 専門分野を極めると、お仕事を継続的にいただけるようになる
- 分野によっては基本の給料が高い
- 前職に関連のある分野を選ぶとレバレッジが効く。
- その分野が好きな場合は、楽しみながら学習、翻訳できる
- あれこれと散漫にならず、その分野のみに集中して効率よく向上できる
- ひとつの専門分野を習熟させると、自信を持って他の分野にもチャレンジできる
このような理由から、翻訳で生計を立てていくには専門分野を持ったほうが良いのです。
そして自分の翻訳分野を定めるには、自分が何が得意で何が得意じゃないのか、つまり自分の翻訳者としての個性(タイプ)を知る必要があります。
翻訳者としての三大タイプ
私は今まで多くの翻訳者さんの翻訳を校閲したり、トライアルのレビューしてきました。そうしているうちに翻訳者さんのタイプは三つに分けられることに気が付きました。
それをまとめたのが以下の図です。

創造型
創造型の個性をお持ちの方は、自然な日本語に翻訳する力が卓越しています。翻訳されたものわからないレベルの極めて読みやすい翻訳を行うのが得意です。また、英語と日本語の違いのギャップを埋めるための創造力(意訳力)が抜群にあります。
創造型の個性をお持ちの方は、例えば出版翻訳や映像翻訳の業界などで活躍できるかと思います。
正確型
正確型の個性をお持ちの方は、卓越した知識とリサーチ力を持ち、原文の意味を正確に伝えることができます。
正確型の個性をお持ちの方は、例えば実務翻訳の業界(科学、IT、財務、会計など)などで活躍できるかと思います。
ハイブリッド型
ハイブリッド型の個性をお持ちの方は、上記の創造型と正確型の能力を併せ持っています。 創造型の能力と正確型の能力の比率がバランスの良いタイプです。知識とリサーチ力による正確な翻訳力に加えて、自然な日本語を生み出す力を有しています。
例えば、実務関連の出版翻訳など創造性も正確性も必要とされる分野で活躍できるかと思います。
自分の個性から専門分野を考えてみる
さて、これから翻訳者を目指そうとしている方は、自分の個性を考えてみてください。
「私は昔から本を読んできて、文章を書いたり読んだりするのが好きだ」と言う方は、創造型にあてはまるかもしれません。そういう場合は出版や映像翻訳を目指してみるのがよいと思います。
「私は大学時代物理学を学んでいて、なにか調べ事をしたりひとつのことを追求するのが大好きだ」という方は、正確型にあてはまるかもしれません。そういう場合は、科学翻訳を専門分野にしてみるのはどうでしょうか。
「私は何が得意かわからないけど、とにかく翻訳をしたい!」という方は、まずは正確型の実務翻訳の分野で勝負することをお勧めします。創造型の分野は競争率が高いので、中々仕事が得られない現実があるからです。
後記
というわけで、私の経験から翻訳者の個性と専門分野のお話をしました。
もちろん、個性から専門分野を決める必要はありません。出版翻訳がやりたいから、出版翻訳を目指す!でも一向に構わないのです。
ただ、こういった人としての個性が翻訳の専門分野を決める上では重要になるということを伝えたかったわけです。
これから翻訳ライフを始めようとしている方に、何か気づきを与えることができれば幸いです。
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